薬剤の安全性

by Kathy Smith – translated by Atsushi Fukuda, DVM

Rabbit Health in the 21st Century (Second Edition) © 2003

薬物による治療(処方薬と市販薬のどちらも)は大部分の疾患に対して一般的に行われる方法ですが、利点とリスクの双方を理解しておく必要があります。特にうさぎに対してはそうです。全てのうさぎの飼主さんが理解しておくべきことが幾つかあります。

1. 大部分の薬剤はうさぎに対する安全性を試験したり、認可を受けたりしていません。そのため、有効性にせよ副作用にせよ、うさぎに対する効果の情報は限られており、製造元から提供される情報はほぼありません。うさぎに対する薬の安全性および有効性に関する情報は、獣医師、保護活動家、うさぎの飼主から得られるものです。

2. 一部の薬剤は、他の薬剤に比べてうさぎに対する安全性が高いのですが、完全に安全な薬はないと心得るべきです。全ての薬剤には潜在的に副作用の可能性がありますし、同じ薬に対しても全てのうさぎが同じように反応する訳でもありません。うさぎに対して投薬を行う際には、どのような薬を使うにしても、うさぎの行動をよく観察し、異常な徴候があったらすぐに獣医師に相談しましょう。

3. 複数の獣医師にかかっているのであれば、担当の獣医師に、うさぎに投与している全ての薬剤の情報(処方薬、市販薬、漢方薬)と、直近の4週間に受けた治療の全てを、必ず伝えましょう。麻酔薬を含めた一部の薬剤は残効性があり、使用から長い時間が経過していても他の薬剤と相互作用する可能性があります。一部の薬物相互作用は致死的であるので、獣医師には必ず最近の投薬歴を伝えましょう。

4. うさぎの消化器系は犬猫のものとは全く異なっています。他の動物種では問題のない薬剤(例えば経口ペニシリン)は、うさぎでは致死的です。同様に、他の動物種では不適切な薬剤(例えばフルニキシンメグルミン、商品名Banamine®)がうさぎでは問題なく使えます。ですからうさぎの経験が豊富な獣医師に診てもらうことが肝心です。

用量に関する戦略

薬用量に関する情報はここでは述べません。なぜなら処方薬にせよ市販薬にせよ、資格のあるうさぎの獣医師の監視のもとで使用されるべきだからです。大部分の薬剤では、適切な用量について製造元から、体重に基づきある範囲を持って示されています。おそらく担当の獣医師はその最低用量から処方を開始して、うさぎの症状が改善しなければ用量を上げていくでしょう。あるいは最高用量から開始して、副作用が現れるようなら減量を行うでしょう。どちらのアプローチも妥当なやり方です。担当医の決定は治療対象疾患の重篤度や、その薬の使用経験、副作用、そしてあなたのうさぎの投薬歴(他の薬剤および、薬剤一般に対する耐性)を元に行われます。特に他のうさぎの飼主さんたちと、うさぎの病気と治療について話をしようと思っているのなら、獣医師が高用量あるいは低用量のどちらで薬を処方しているのか、お聞きになりたいことでしょう。また薬用量を把握しておくことで、副作用に注意すればいいのか、症状が改善しないことに注意すればいいのか、注意するポイントがはっきりします。獣医師に相談なしに投薬量を変更するのはいけません。

薬の安全性に関わる要素

製薬産業(治験データの処理)で20年以上働いて来て、薬の安全性を左右する要因である、副作用、薬物相互作用、患者の投薬歴に対して慎重になりました。薬が「絶対に安全だ」と言う人物には注意すべきです。薬箱の横に書かれた注意書きや警告文を見て、たとえその副作用や相互作用の事例がうさぎでは起こったことが無くても、うさぎで実際に起こるのだと勘違いしていました。非常に稀ながら致死的な副作用が、患者500人あるいは1000人に1人の割合で起こるのは珍しくありません。実際に、うさぎの状態によっては、あるいは治療を既に行ってみた結果、獣医師がそうした警告を含む治療法(の組み合わせ)を勧めることがあります。こうした場合、提案された治療法について飼主および獣医師がオープンに話し合って、実施するか否かを決定すべきでしょう。

獣医師が薬剤を処方する際、「よくある」副作用について説明することでしょう。もし説明がない場合には、自宅で注意しておくことがあるか質問しましょう。簡単に見つけられ、多くの薬剤で起こりうる副作用として、下痢/便秘と、嗜眠/興奮が挙げられます。多くの薬剤において、患者が違えば正反対の反応が起こるのです。その他の一般的な副作用については、うさぎでははっきり分かりません。もしうさぎの様子が「いつもと違う」、あるいは単に「調子が悪そう」と感じたなら、薬剤の副作用による吐き気、抑鬱といった症状があるのかもしれません。最後に、一部の薬剤は肝臓、腎臓、その他の主要な臓器に、特に長期間に渡って使用した場合に障害をもたらす恐れがあります。こうした臓器障害は血液検査で見つかる可能性がありますし、幸運なことに薬を止めれば正常値に戻ることが多いです。

全ての「薬」(処方薬、市販薬、漢方薬)には他の薬剤、あるいは食物と相互作用する可能性があります。命に関わるような相互作用を避けるためには、担当獣医師があなたのうさぎに与えられている全ての薬(漢方薬やサプリメントを含めて)を把握していないといけません。組み合わせによっては、新たな副作用を生じたり、一般に見られる副作用が強化されたり、薬効が増強したり、あるいは薬効が減弱するかもしれません。一部の副作用は単に複数の薬剤の投与時間をずらすだけで回避できます。それ以外のケースでは、獣医師は問題となる薬物相互作用を回避するために、処方のうち1つの薬を変更することでしょう。

うさぎの投薬歴は、治療の安全性を判断する重要な情報です。普通ならば安全な薬でも、代謝によってはうさぎに悪影響となり得ます。例えば腎臓または肝臓で代謝される薬物は、それらの臓器に障害を持つうさぎではまずい選択肢となります。過去に投薬してみて副作用のあった薬剤について、獣医師に知らせることも重要です。副作用の履歴が分かれば、同系統の薬を避けたり、同経路で代謝される薬を避けることができるのです。

上記の全てが、投薬に際して、資格のあるうさぎの獣医師に相談し、獣医師の指導の元で投薬を行うべき理由です。用量、頻度、薬の組み合わせについて、獣医師の指示に従いましょう。普通ではない症状や行動が見られたらすぐに、獣医師へ報告するようにしましょう。臨床症状を確認するための再診予定をきちんと立て、心配事は相談し、必要な検査を受けるようにしましょう。

最後に、新しい薬をうさぎに与える際には、しばらく自宅に居られて、様子を観察できる時に投薬するのが良いでしょう。例えば、朝の投薬はあなたが仕事に出かける直前に与えるのではなく、目覚めてすぐに与えるようにします。あるいは、副作用が心配な場合には動物病院の診療時間が開始してから投薬するのも手です。最初の投薬はクリニックで行ってもらって、うさぎが大丈夫なことが確認できるまで様子を見てもらってもいいでしょう。下記の「リスク要因」に一つでも当てはまるのなら、特に注意して、初めての薬を投与するようにします。

·         副作用がよく起こる薬である場合

·         うさぎが高齢(6歳以上)あるいは健康状態が優れない場合

·         うさぎに複数の薬を投薬している場合

·         うさぎが薬に敏感である場合

 

 

 

  

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