うさぎの胸腺腫に関連した皮脂腺炎

 

 

Esther van Praag, Ph.D. – translated by Atsushi Fukuda, DVM

 

 

警告:このページには一部の方に不快と思われる画像が含まれています。

皮脂腺炎と呼ばれる疾患の病因はよく分かっていません。特発性とも、遺伝性とも、内分泌性とも考えられています。うさぎでは、この疾患は遺伝的な自己免疫疾患に、脂肪酸代謝障害を伴ったものであるようです。自己免疫性の皮脂腺炎は犬でも発見されており、その根拠として皮膚の免疫組織学的検索と、免疫抑制剤のシクロスポリンによる治療が奏功することが挙げられます。

うさぎでは複数のタイプの胸腺腫が知られています:

·    胸腺腫ー胸腺が腫瘍化したもの。

·    リンパ球性胸腺腫ーリンパ球増多が見られます。

·    嚢胞性胸腺腫ー胸腺内に液体貯留が見られます。.

臨床徴候

皮脂腺炎の初期の臨床徴候は、皮膚アレルギーに類似しています。皮脂腺の炎症と、進行性の皮脂腺および近傍の毛包破壊、さらに毛包炎(壁性リンパ球性毛包炎)が見られます。症状は時間を経るにつれ悪化します。発毛の停止、薄毛、そして脱毛部が現れます。皮膚の紅斑と、異常な肥厚(過角化症)が現れます。皮膚にしっかりと付着した鱗屑が見られます。うさぎではさらに、表皮基底膜へのリンパ球浸潤(境界性皮膚炎)が見られます。その結果、基底膜の細胞が影響を受け、ケラチノサイトの細胞死と、時には毛包-真皮境界部の炎症(境界性毛包炎)が起こります。

うさぎの皮脂腺炎は斑状に始まるか、進行性の転機を辿り、頭部の非掻痒性鱗屑形成へと至ります。進行すると頸部、腰部、全身に拡大します。病変部はしばしば、頭部および腹部にかけて左右対称性に見られます。

 

診断

胸部レントゲンが胸腺腫の除外診断に役立ちます。

Angie Lai

呼吸困難を呈するうさぎの胸部レントゲン画像。肺野の頭腹側に軟部組織の不透過性亢進が見られます。マス、腫瘍、アブセス、肉芽腫が存在することにより、心臓と気管が背側へ変位します。うさぎではこうした変化はしばしば、アブセスや胸腺腫、あるいは原発性肺腫瘍によるものです。さらなる精査方法として、超音波ガイド下あるいはブラインド法による針吸引生検を行います。

皮脂腺炎はしばしば、皮膚アレルギーと誤って診断されます。その結果、不適切な治療が行われます。皮膚アレルギーの治療による改善が見られないと、続いて皮膚糸状菌症、寄生虫感染、休止期脱毛といった皮膚疾患が考えられます。こうした皮膚疾患はさらに、胸腺腫関連剥脱性皮膚炎、皮膚リンパ腫、自己免疫性肝炎による皮膚炎などと鑑別する必要があります。

治療

うさぎの健康状態、胸腺腫のタイプ、予後に応じて、様々な治療オプションが挙げられます。

·         胸腺の腫瘍化の場合、放射線療法により寛解または腫瘍サイズの縮小が見込めます。

·         リンパ球性胸腺腫の場合、コルチコステロイド(例 プレドニゾロン)による症状軽減が望めます。

·         嚢胞性胸腺腫の場合、貯留液のドレナージによる症状軽減が望めます。

胸腺腫の成長は緩徐なため、時には無治療でおくこともあります。腫瘍は時間とともに大きくなって心臓と肺を圧迫し、呼吸困難へと至ります。

胸腺腫に随伴する皮脂腺炎が見られる場合、定期的なブラッシングをすることでフケを除去し、二次的な細菌感染が起こらないようにします。

抗真菌薬、コルチコステロイド、免疫抑制剤による治療では症状は軽快しません。脂肪酸、ビタミンA、レチノール(イソトレチノインやエトレチナートなど)の投与を検討することもできますが、これらの物質による有害作用も考慮に入れなければいけません。

シクロスポリン(5mg/kg, PO, SID)と中鎖トリグリセリド、必須脂肪酸、さらにプロピレングリコールスプレーの局所噴霧の組み合わせにより、うさぎの皮脂腺炎治療は奏功します。2か月後には寛解し、新たな発毛が見られます。この治療法は費用がかかることと、うさぎに不要な苦痛を与える時間を長引かせないために、安楽死の選択肢が取られることがあります。

 

放射線療法を受ける前のBella

胸腺腫に関連した皮脂腺炎であることが確認されました。

頭部の側面像

Nancy Martin

頭頂部

Nancy Martin

Nancy Martin

 

放射線療法から2-3か月後、Bellaの歩様がおかしくなりました

Nancy Martin

References

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White SD, Linder KE, Schultheiss P, Scott KV, Page G, Taylor M, Best SJ, Walder EJ, Rosenkrantz W, Yager JA. Sebaceous adenitis in four domestic rabbits (Oryctalagus cuniculus). Vet Dermatol 2000;11:53-60.

 

レントゲン画像をご提供下さったAngie Lai(シンガポール)と、うさぎのBellaの写真をご提供下さったNancy Martic(アメリカ)に深謝申し上げます。ビデオを作製して下さったDebbit Hanson(アメリカ)に深謝申し上げます。.

 

 

  

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